農業でもらえる補助金
農業を頑張っているあなたは、現在の営農での収支や新たな挑戦を考え、何か補助金が使えないかとお考えではないでしょうか。
ご存知の通り、補助金は申請主義ですので要件に当てはまっていても申請しないことには交付されません。
そのためには、どのような補助金が存在するのか頭の片隅に入れておく必要がありますよね。
そして、いざ申請するにも手続きの方法や流れが気になってきます。
農業で使える主な補助金の概要
農業で使える主な補助金の概要
農業では目的別に、次の補助金が用意されています。
(1)設備投資や物品購入に関する補助金
(2)人材雇用に関する補助金
(3)新規就農に関する補助金
(4)農地集積・改善に関する補助金
(5)収益補填に関する補助金
補助金は、やみくもにお金をバラまくものではありません。
必ず明確な目的があります。
そのため補助金を検討する際は、金額や条件よりもその目的を十分理解して調査することをお勧めします。
そうする方が、あなたの希望に沿ったものが見つかるでしょう。
国の施策でおこなわれるものは、農林水産省で公開されています。
毎年度予算をきめて、実施されています。
【国の施策の補助金の主な例】
◎ 強い農業・担い手づくり総合支援交付金
◎ 農の雇用事業
◎ 農業次世代人材投資資金
◎ 農地耕作条件改善事業
◎ ゲタ・ナラシ対策
地方自治体においても同様に、実施されています。
【地方自治体の補助金の主な例】
・ビニールハウス補助金 ~ 岐阜県関市
また、一般的な補助金でも農業にも使えるものがあります。
【一般的な補助金の主な例】
・IT導入補助金 ~経済産業省
次章より、目的別に代表的な補助金を詳しくご説明します。
【補助金】と【助成金】の違い
2つには次の違いがあります。
一般には「補助金」と「助成金」は区別せず使われているケースが多いようです。
「助成金」・・・要件を満たして申請すれば、必ずもらえる
「補助金」・・・要件を満たして申請し、審査をうけて採択されたらもらえる
設備投資をしたい
(ドローンの購入や農業機械導入、倉庫建設等)
主に設備投資に使える補助金をご紹介します。例えば、農業機械を導入したい、農業倉庫を建設したい等です。この章を読むことで、設備投資に使える補助金の概要が理解できます。
強い農業・担い手づくり総合支援交付金
地域担い手育成支援タイプ
「地域担い手育成支援タイプ」は、
農業用機械・施設導入に使えます。
具体的にはトラクターの買い替えや、ドローンの購入、ビニールハウスの整備などです。
【金額】最大300万円
【計算方法】次のいずれかのうち最も低い金額
・事業費の3/10
・融資残高
・事業費-融資額-地方公共団体等による助成額
【問合せ先】農林水産省経営政策課担い手総合対策室(03-6744-2148)もしくは各地の農政局経営・事業支援部経営支援課
先進的農業経営確立支援タイプ
「先進的農業経営確立支援タイプ」は、
より高い目標をもって地域農業の相乗的発展にとりくむ農業経営体に助成されます。
大型のトラクターや穀物乾燥機などの導入に対して支援が受けられます。
【金額】個人:最大1,000万円 法人:最大1,500万円
【計算方法】次のいずれかのうち最も低い金額
・事業費の3/10
・融資残高
・事業費-融資額-地方公共団体等による助成額
【問合せ先】農林水産省経営政策課担い手総合対策室(03-6744-2148)もしくは各地の農政局経営・事業支援部経営支援課
人を雇いたい
( 研修生受け入れなど )
人を雇いたい農家や法人向けに、「農の雇用事業」という補助金があります。
新規就農者の研修補助や、次世代の経営者を育成するための支援が受けられます。
農の雇用事業
雇用就農者育成:独立支援タイプ
「雇用就農者育成・独立支援タイプ」は、
農業法人等が新規就農希望者を雇用し、実践的な研修を行う場合に受けられます。
【金額】年間最大120万円
【期間】最長2年間
【主な要件】雇用年齢は原則50歳未満等
【問合せ先】全国農業会議所分室(03-6265-6891)もしくは各都道府県会議所
次世代経営者育成タイプ
「次世代経営者育成タイプ」は、
次世代の経営者を育成するために、先進的な農業法人や異業種の法人へ派遣する際に受けられます。
【金額】月間最大10万円
【期間】最長2年間
【主な要件】派遣した研修生は、研修終了後1年以内に役員等へ登用すること等
【問合せ先】全国農業会議所分室(03-6265-6891)もしくは各都道府県会議所
新規就農したいなら
(農業へ転職など)
主に農業を始めたい方にお勧めの補助金が、「農業次世代人材投資資金」です。
以前は「青年等就農給付金」を呼ばれていました。
農業を始める前の研修期間と就農後で、それぞれ「準備型」「経営開始型」にわかれています。
農業次世代人材投資資金~準備型
「農業次世代人材投資資金~準備型」は、
就農前の研修を支援するものです。
農業を始めるために、十分な研修を受けられるよう支援する制度です。
【金額】年間最大150万円
【期間】最長2年間
【主な要件】就農予定時の年齢が50歳未満等
【問合せ先】農林水産省経営局就農・女性課(03-3502-8111)もしくは各地の農政局経営・事業支援部担い手育成課
農業次世代人材投資資金~経営開始型
「農業次世代人材投資資金:経営開始型」は、
就農後の生活費を支援するものです。
【金額】年間最大150万円
【期間】最長5年間
【主な要件】認定新規就農者、年齢が50歳未満で独立・自営就農する等
【問合せ先】農林水産省経営局就農・女性課(03-3502-8111)もしくは各地の農政局経営・事業支援部担い手育成課
農地条件を改善したいなら
(農地集約・土壌改善など)
主に農地に使える補助金をご紹介します。
散在する農地を集積して効率化をはかる際の補助金や、土壌改善などを大規模に実施する場合に使えます。
地域集積協力金
【 資料(PDF) 】
「地域集積協力金」は、
地域に散在する農地をできるだけ効率よく農業できるよう集約し、まとめて貸し付けた際に交付されます。
【対象先】地域で話し合い、農地バンクへまとまった農地を貸し付けた地域の農家
【主な要件】交付対象農地の1割以上が新たな担い手に集積されること
【計算方法】農地面積に決められた掛け率を乗じる
【問合せ先】農林水産省経営局農地政策局(03-3591-1389)
経営転換協力金
【 資料(PDF) 】
「経営転換協力金」は、
高齢化などで農業の人手が不足してきた場合に、農地を遊ばせないために農地バンクに貸し付けた場合に交付されます。
【対象者】農業部門の減少で経営転換する農業者、リタイアする農業者、農地の相続人で農業しない者
【主な要件】農地を10年以上「農地バンク」に貸し付けること等
【計算方法】農地面積に決められた掛け率を乗じる
【問合せ先】農林水産省経営局農地政策局(03-3591-1389)
農地耕作条件改善事業
【 資料(PDF) 】
「経営転換協力金」は、
高齢化などで農業の人手が不足してきた場合に、農地を遊ばせないために農地バンクに貸し付けた場合に交付されます。
【対象者】都道府県、市町村、農業法人、農協などが計画する整備区域内の農業者等
【種類】地域内農地集積型、農地集積推進型、高収益作物転換型
【計算方法】整備にかかった費用の範囲内で決められた額を決められた期間にわたって交付
【期間】最大5年(機器・物品などのハードは最大3年)
【問合せ先】農林水産省農村振興局農地資源課(03-6744-2208)
米や小麦などの畑作物に使える補助金
米や小麦などの畑作物に使える補助金をご紹介します。
畑作物や水田作物についてもらえる補助金があります。
「ゲタ対策」「ナラシ対策」とも呼ばれています。
畑作物の直接支払交付金(通称:ゲタ対策)
「畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)」とは、
畑作物について外国との間に生産条件の違いで価格差にある場合に、不利な部分を補填してくれるものです。
数量払と面積払があります。
【対象作物】麦、大豆、てん菜、でん粉原料用ばれいしょ、そば等
【対象者】認定農業者、認定新規就農者
【交付方法】「標準的な生産費」と「標準的な販売価格」の差額分に相当する交付金を直接交付
【問合せ先】各地の農政局、地域センター
米・畑作物の収入減少影響緩和交付金(通称:ナラシ対策)
【 資料(PDF) 】
「米・畑作物の収入減少影響緩和交付金(ナラシ対策)」とは、
当年産の販売収入の合計が標準収入を下回った場合に、その差額の9割を補填してくれるものです。
【対象作物】米、麦、大豆、てん菜、でん粉原料用ばれいしょ
【対象者】認定農業者、認定新規就農者
【交付方法】(標準的収入額-当年産収入額)×0.9を交付
【問合せ先】各地の農政局、地域センター
水田活用の直接支払交付金
【 資料(PDF) 】
「水田活用の直接支払交付金」とは、
販売目的で水田耕作する農家に対し、水田のフル活用を後押しするものです。
【対象作物】飼料用米、麦、大豆など
【対象者】販売目的で対象作物を生産する農家
【交付方法】地域の取り決めにより単価が設定され、面積を乗じて計算
【問合せ先】農林水産省政策局穀物課水田対策室(03-3597-0191)
補助金交付の流れ
補助金の交付までの流れを説明します。
一般に次のステップを踏みます。
補助金交付のステップ
STEP1. 補助金を調べる
STEP2. 申請する
STEP3. 採択される
STEP4. 事業を実施する
STEP5. 補助金を受け取る
STEP1. 補助金を調べる
まず最初に、目的にあった補助金を調べます。
農業の補助金で一番に見ておきたいのは、農林水産省の逆引き辞典です。
農業関係の補助金のうち、国が行うものはここで見つけることができます。
次のようなものは農林水産省のHPでは見つけられません。
お近くのJAや農業委員会でも情報を持っておられる場合もあるので、相談されることをお勧めします。
STEP2. 申請する
目的の補助金が見つかれば申請手続きを行います。
応募書類は、実施事業体の該当ホームページからダウンロードできます。
必要なものは印刷して揃えましょう。
ただ、ホームページの情報だけで終わらせるのはお勧めしません。
ホームページの情報が古い場合や制度変更になっている場合があります。
できれば、窓口に行って直接相談しましょう。
実際に担当者と話をして、必要な書類、要件、締め切りなどを確認すると安心です。
特に必要な書類は補助金によって様々です。
書類の中に入手しにくいものもあります。
その場合、代替できる書類がないかも相談しましょう。
業者の見積りが必要な場合もあります。
取り寄せに時間がかかるので、その分も計算に入れておきましょう。
印鑑の印影がかすれて見にくいなどでも、「差し戻し」になります。
自分が審査するつもりになって、確実に進めましょう。
STEP3. 採択される
ホームページ等を通じて採択結果が通知されます。
確認できたらすみやかに次の工程にうつりましょう。
期限が来ても開示されない場合は必ず問い合わせましょう。
なぜなら、募集期間を延長になり、すべての工程が延びることもあるからです。
また、不採択になってもすぐに諦めてはいけません。
予算が余っているれば、2次募集、3次募集があるからです。
不採択になった理由を省みて、今度こそ受かるよう再トライしましょう。
STEP4. 事業を実施する
採択結果に基づいて、事業を実施します。
注意点として、結果が出る前に先行してやってはいけません。
申請→採択→実施の前後関係は必ず守りましょう。
なぜなら、後付けで助成金を不正受給か?と誤解されない為です。
事業にまつわる書類の本来の流れ
通常の取引で、各書類の日付が入れ替わることはまずありません。
(1)見積書
(2)注文書・発注書
(3)受領書・検収書・工事完了確認書
(4)請求書
(5)支払通知書
審査する側も厳しくチェックしてきます。
一つずつ確実に進めましょう。
STEP5. 補助金を受け取る
指定した口座に振り込まれます。
もちろん他人名義の口座はNGです。
資産購入に関する補助金は、補助金分が資産の取得原価にどう影響するか注意しましょう。
また、農業次世代人材投資資金等の収入に関する補助金は、所得として扱われるので確定申告が必要です。
補助金を受け取ったらそれで終わりではなく、その後も適切に処理しましょう。
まとめ
この記事では次のことをご説明しました。
(1)農業で受けられる代表的な補助金の一覧
(2)目的別にわかる代表的な12種類の補助金の詳細
(3)補助金交付までの流れ
農業の補助金の概要が理解できたことと思います。
補助金は、ここでは紹介しきれないくらい全国各地で様々なメニューがあります。
この記事を参考に、ぜひあなたにとっての理想の補助金を見つけてください。
あなたの農地・農業のお困りごとの解決の一助になれば幸いです。